Antifragileの読書感想文。今週は快調に読み進み、11章まで読破したが、
BOOK3(9章〜11章)ではバーベル戦略について書かれている。
以前からタレブ氏が主張し実践している、対ブラックスワンの投資戦略だ。

バーベル戦略は理論の奥深さに比べ、方法はシンプルで、簡単に述べると、
安全な資産に90%を賭け、極端にリスクの高い資産に10%賭けるというものだ。
その真ん中が抜けており、重量挙げのバーベルに似ているのでタレブはそう呼ぶ。
以前の記事で取り上げた2008年の金融危機の例でその戦略に触れてみよう。

その金融危機以前、好景気に湧くアメリカでは、ほとんど全員が住宅価格が
上昇する方に賭けており、金融機関も上昇相場に乗って儲けていた。
リスクは金融工学によって管理されているはずだし、住宅価格が下がる事など
ほとんどあり得ないと信じられていた。

そのような状態はfragileだといえる。全ての資産を住宅価格の上昇(と、それに伴う
好景気)に賭けていると、万が一ブラックスワンが来て住宅価格が下がった場合に、
資産が吹き飛んでしまう。それに金融工学はブラックスワンの前では無力だ。
(当時はそんな事分からなかったかもしれないが)

一方バーベル戦略では、ブラックスワンによって全ての資産が吹き飛ぶ事を避け、
それ以上にブラックスワンが来たら儲かるようなantifragileなポジションをとる。

私も本で読んだ程度の知識しかないので正確性に欠けるかもしれないが、
イメージを掴むために例を挙げてみると、例えば、900万円をインフレ耐性のある
安全資産(インフレ連動債など)に賭け、残り100万円でリスクを取って、
サブプライム債のCDSを買うという感じだろうか。

サブプライム債のCDSは、買っておくと、対象のサブプライム債が焦げ付いた時に、
それを保証してくれる保険のような商品で、他人のローンにも賭けることができる。
仮に1億円のサブプライム債のCDSが100万円で買えたとして、もしそれが全て
焦げ付けば1億円がもらえる。逆に何も起こらなければ100万円は捨てる事になる。

大手金融機関はほぼ間違いなくfragileな戦略をとる。何故なら彼らはサラリーマンで、
四半期毎の利益目標を負わされ、それが競合他社に劣る事も許されない。
上昇相場が生まれたら乗るしかなく、いつ来るか分からないブラックスワンなど
気にしている暇など無い。来たら来たでどうせ皆だめになるし、自分の責任ではない。

それでは個人ならantifragileな戦略をとれるかというと、それはそれで難しさがある。
それは感情的な問題だ。皆が上昇相場に浮かれている時に、じっと90%の資産を
安全資産として置いて置き、かつ、相場の下落に10%を賭けられるだろうか。
その10%は損する可能性の方が高い。いつ来るかわからないブラックスワンが来るまで
日々目減りしていく資産を眺め続けるのは、かなりの苦痛を伴う。逆張りはつらい。
 
さて、現在の日本におけるバーベル戦略はどのようなものになるのか、という事を
考えようとしてこの記事を書き始めたのだが、長くなったので続きは次回に。


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